仮想通貨と規制
執筆者:小山英斗
今ではその認知度だけはあがった仮想通貨。皆さんは持っていますか?
下のグラフはどの国の通貨で仮想通貨の取引が行われているかの割合を示したものです。
(www.cryptocompare.comより2018/3/10現在のグラフ)
実は日本(JPY=日本円)仮想通貨取引量ではNo1なっています。
仮想通貨が日本円での取引量が最も多いのには大きく2つの背景があります。
ひとつは中国での仮想通貨規制。中国ではもともと自国通貨である元の信用が低いため、資産を元以外で持つ(例えばドルなど)傾向がありました。
仮想通貨はその資産の逃避先として広まりましたが、資産の海外流出を防ぎたい中国政府は自国内での仮想通貨取引の禁止に踏み切りました。中国はもともと仮想通貨取引量は世界一でしたが、この規制により中国元での取引は急速に縮小していきました。
そしてもうひとつは日本での仮想通貨に関する法律が昨年施行されたことです。新資金決済法では仮想通貨は法定通貨(円のような)としては認められたわけではありませんが決済手段として認められたこと、また仮想通貨を取り扱う取引所が金融庁の監督下による登録制になりました。また利益に対する税金の扱いも定められました。これらのことにより、日本ではより安心して仮想通貨に投資を行う機運が生まれ、日本国内での取引が盛んになりました。2017年は仮想通貨元年ともいわれています。
同じ仮想通貨に対する規制でも、中国の規制は後ろ向きな規制、日本での規制は前向きな規制とも言えるでしょう。
上記のグラフはここ1年の仮想通貨市場全体の時価総額の推移です。年初には約8200億ドルあった時価総額ですが、3/10現在約3900億ドルまで下落しています。
(https://coinmarketcap.com/charts/より)
わずか2か月ちょっとで実に約53%の下落率となっています。これは暴落と言っていいでしょう。ちなみに仮想通貨はその価格変動が大きいことも大きなリスクのひとつとなっています。その価格変動の幅は株式の3倍はあると考えています。ですので下落時の変動幅を株と比べた場合、以下のように言えると思います。
株 仮想通貨
平常 5% 15%
調整 10% 30%
暴落 20% 60%
仮想通貨はその変動幅が大きいため、30%程度では暴落とは言えず調整ととらえられますが、さすがに60%前後までくると暴落と言えるでしょう。
仮想通貨に関するリスクには価格変動以外にも技術的リスク(仮想通貨を成り立たせているブロックチェーンや暗号化などのIT技術)やコミュニティーリスク(詐欺など)がありますが、一番影響の大きいリスクは政治・規制リスクだと思います。
最近の仮想通貨市場が下落する引き金となったと考えらえるのは米証券取引委員会(SEC)が3月7日に発表した、全ての仮想通貨取引所はSECに登録しなくてはならないとする声明だったと言われてます。またコインチェックという日本の仮想通貨取引所で仮想通貨の盗難が発生したことを皮切りに、日本の金融庁による仮想通貨交換業者7社の行政処分も世界で報道されています。
仮想通貨はこれまでの国が管理する「法定通貨からの脱却」と「価値の民主化」を目指して誕生しました。そのため法定通貨という既得権を持っている国と、通貨の民主化という側面を持つ仮想通貨は相対する位置づけにあることから、既得権を守ろうとする国の規制は仮想通貨にとってリスクになりえます。その規制について国際レベルで話し合いが行われようとしているのが3月19日に開かれる予定のG20です。ここで国際社会で今後どのように仮想通貨を扱おうとしていくのか、その内容と成り行きについて注視する必要があるでしょう。
しかしながら仮想通貨が便利なものであると人々に認識されるにつれ、人は便利なものに流れるのは歴史がものがたっているように、その流れは規制で止めることはできないと思っています。インターネットが誕生し情報の民主化が起きたのと同じように、価値の民主化の流れは今後も続くと思います。
未来が見えるね研究所 代表 小山英斗
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