金価格と円安の行方

執筆者:小山英斗

先月の8月29日、地金商最大手の田中貴金属工業が発表した国内の金の店頭小売価格(税込)がとうとう1グラム1万円を超えました。節目となる1万円を超えた記念にそのスクショを貼っておきます。1998年には1グラム865円という価格でしたので25年でおよそ11倍にもなっています。

出典:田中貴金属工業株式会社


各国の金融緩和やウクライナとロシアの戦争といった政情不安により金の海外価格も上昇傾向にありましたが、2020年8月に1トロイオンス2069.4ドルの最高値を記録してから、現在は1920ドル前後といまだに海外価格は最高値を超えられずにいます。

出典:三菱マテリアル株式会社


また、金の国内価格と海外価格の推移を見ると、2021年頃までは同じように推移していた価格が、2022年以降は乖離しているように見えます。これは、ドル建ての海外価格が下落傾向にあるにもかかわらず、円建てとなっている国内価格が円安の影響によって上昇しているためです。

ドル建て価格が下落している要因は、米国をはじめとした各国の金融引き締めにより金利が上昇しているため、利息を生まない金の魅力が債券などに比べて落ちているためです。

一方で、国内価格は円安によって金価格は上昇傾向が続いています。日本は米国などと比べ金融緩和が継続していることから金利水準がいまだに低く、お金は金利の低い国から高い国へ流れる傾向があるために金利差が円安の要因の1つとなっています。

2022年以降の国内金価格の上昇は金の価値が上がったというよりも、「円の価値が下がった」ことによるものと言えるでしょう。

円の価値が下がることは円での購買力が下がることを意味し、金だけでなく輸入しているものの価格が上がることにつながります。今起きている国内のインフレは、こうした円安による影響が大きいと考えらます。


では、今後も円安は続くのでしょうか?


米国などで金融引き締めが終わり金利が低下すると、いったんは円高になるかもしれません。しかし、個人的には、円の価値は長期視点では今後も下落していく可能性の方が高いと考えています。

その理由は、日本は「少子高齢化が進んでいること」と「イノベーションが起こりにくいカルチャー」であると考えていて、その打開策も今のところ見えません。

それらの理由により、日本の国力が長期的には上がりずらく、また貨幣価値は長期的にはその国の国力と相関していると考えているため、円高よりも円安が続く可能性の方が高いと思っています。

そのため、円資産だけでなく海外資産にも分散投資をすることが自身の資産価値を維持するには必要と思います。


未来が見えるね研究所 代表 小山英斗


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