米国高配当ETFを「絶対に売却しない」約束で代々継承していくことは有効か?
執筆者:小山英斗
資産形成の手段として人気を集める投資先の1つに「米国高配当ETF」があります。これを「絶対に売らないように」というのを遺言にでもして、子や孫へと代々相続していくということを考えているのが、かく言う筆者自身です。果たしてそのような考えは有効なのでしょうか?
■高配当ETFの魅力は「定期的なインカム」
米国高配当ETF(例:VYM、HDV、SCHDなど)の最大の特長は、安定した配当利回りです。これらは配当利回りが概ね3〜4%程度に設定されており、長期保有によって「配当収入」という形で現金収入が期待できます。
仮に1000万円分の米国高配当ETFを保有していれば、年間で約30〜40万円の配当が得られる計算です。投資先の企業が広く分散されているETFであれば、安定した成長や増配も期待できます。インフレヘッジにもなり、売却せずともキャッシュフローが確保できるのは、退職後や相続人にとって非常に心強い資産となり得ます。
■代々引き継ぐメリット
このETFを「絶対に売却しない」ことを原則とすれば、資産そのものは減ることなく、長期にわたって配当という形で利益を得られます。以下のような利点が考えられます。
- 生活資金の補填:配当金は生活資金に充てることができます。
- 再投資による複利効果:相続人が若ければ、配当を再投資することで資産の増加も見込めます。
- 相続時の評価メリット:ETFは上場商品であり、評価額は時価に基づくため、相続税評価も透明性があります。
■「絶対に売らない」ことのリスク
一方で、「絶対に売らない」という方針にはいくつかのリスクや制約も考えられます。
- 相続税の納税資金の問題:金融資産の一部がETFとして相続された場合でも、相続税は「現金」で支払う必要があります。納税資金の準備ができていないと、やむなく売却せざるを得ない場面も想定されます。
- 配当課税の蓄積:米国高配当ETFは米国内でも源泉徴収(10%)され、日本でも課税(20.315%)されます。配当を得るごとに税金が引かれるため、長期でみると非効率な部分もあります。
- 市場環境の変化に柔軟に対応できない:ETFが大きく下落した場合でも「売れない」となると、資産が減少しても維持し続けることになりかねません。
■配当でお金の使い方も学んでほしい
米国高配当ETFを「絶対に売らない」という一方で、定期的な配当収入については、引き継いだ子供たちが使いたいように使ってくれることを望んでいます。
お金の価値は年を取ってからよりも若いときの方がより引き出せるのではいかと思います。なので、子どもたちには、人生経験を豊かにするためにも、お金を増やすことだけでなく、お金の使い方も学んでいってほしいという想いがあります。その想いの実現手段として、米国高配当ETFを絶対に売却しない約束で継承していくのは、有効な方法の1つであると思っています。
未来が見えるね研究所 代表 小山英斗
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