なぜ投資が必要か

執筆者:小山英斗

新NISAが話題になる中、資産形成のために投資が必要と言われます。

確かに「資産形成のため」という理由は間違いではないのですが、もう1つ大事なこととして、「格差社会において貧しくならない」ようにするためにも投資は必要と考えます。

労働で得られる賃金で見ると、日本は他の OECD 加盟国と比較してかなり低い水準となっています。G7 の中では最下位で、アメリカの平均年間賃金のおよそ半分でしかありません。

ここ最近では日本でも賃上げの動きがみられるようになりましたが、それは大企業を中心とした一部の動きにとどまっているように見受けられます。他の主要国と比較した平均年間賃金の推移を見ても、日本の労働賃金が上がっていないことがわかります。

生産性の低さやイノベーション力の差が労働賃金にも反映され、昨今の円安もあいまって日本は購買力の低い貧しい国になりつつあるかのように思えてしまいます。

賃金格差だけでなく、資産格差がますます格差社会を生み出します。

トマ・ピケティ氏が唱えた「r > g」の式をご存じでしょうか?

「r」は資本収益率を「g」は経済成長率を示します。同氏が 18 世紀まで遡ってデータ分析した結果、「r」の資本収益率が年に 5%程度であるにもかかわらず、「g」は1~2%程度しかなかったと指摘してています。

これは言い換えると、資産運用により得られる富(運用益)は、労働により得られると富(賃金)よりも成長が早いということになります。つまり資産を持っている人(裕福な人) はより裕福になり、労働でしか収入を得られない人はいつまでも裕福な人に追いつけないわけです。

では例として、株式配当から収入を得ている人と、会社員で給与収入を得ている人を比較してみます。どちらも、現時点での収入が 400 万円だとします。先のピケティ氏よるデータ分析結果での資本収益率(5%)を配当の増配率とし、経済成長率(2%)を賃上げ率とした場合、数年後の収入はどうなるかを試算します。

年数が経つほどに収入の差が開くことが分かります。

株式で 400万円の配当を得るためには、配当利回りを 3% とすると約1億3000万円(税金を考慮せず)ですが、それだけの資産があれば給与収入 400万円の会社員と同程度の生活をすることができ、将来的にはその会社員よりも、より豊かな生活ができる可能性があるわけです。

だからこそ、今はまだ資産がない人でも格差社会において貧しくならないように、1万円からでもいいので投資を始めて資産を増やし、資産から収入を得られるようにしていくようにしましょう。


未来が見えるね研究所 代表 小山英斗




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